表現するということを行動の一つとして考え、その過程について考える。
第1章では、想像するということについてと、想像力と記憶・経験との関係についてを想像のメカニズムと絡めて述べる。想像力は、記憶・経験とは相互関係にあり、依存する関係にある。想像が経験に基づくだけではなく、経験も想像によって豊かになるといえる。また想像のメカニズムであるが、これは現実から想像へ、さらに想像から現実へという循環過程として捉える。まず、想像の産物を作り上げた諸要素は、人の現実の経験や印象の中から取り出されたものであり、それらの諸要素は、人間内部の思考において、複雑な過程を経て改造を受け、想像の産物となると考える。さらに、体や言葉、描画などの手段によって具体化され、また現実の世界に戻ってくる。しかし、その元の諸要素は、元の形とは似ても似つかぬものとなって、新しい文脈の中で新しい命を与えられ、現実を変える積極的な力を帯びて復活する。
第2章では、想像に伴った創造について、想像性・創造力、創造のプロセスを経て、視覚的、聴覚的な表現について述べる。
創造的活動には、想像力のほかに、独創力が必要である。独創力とは、様々な要素を新しい、予想もつかない方法で1つにする力のことである。頭の中でイメージとして想像したモノを基に、実際に創造して形に現す。そして、この創造のプロセスおよび、何かを決める場合の創造の範囲限定を担う創造性の水準について、そして実際に形にする際のガイドラインとなる創造技法についてまとめる。視覚表現の中でも色彩表現を、聴覚的な表現の中から映画やドラマなどで用いられるBGM表現について述べていく。
第3章では、想像したものを形に表したものを、他者に表現する方法などについて述べる。ここでは、表現=コミュニケーションとして捕らえ、それをプレゼンテーションの方法とからめて考えていく。
情報やプランを伝達し、その結果として送り手の意図した方向へ受け手の判断や意思決定を行ってもらう「プレゼンテーション」だけではなく、新しく創造したものを、他者に発表・公開することも、一種のプレゼンテーションであると考える。また、どうすれば、より効果的に、より効率よく他者に伝えられるかということについても考える。
第4章では、インターネットの普及に伴い、表現の場としてのWebについて、Webというツールで表現するという行動に、今後どのような影響を与えるのか推論しながら、Webの表現における有用性を考える。インターネットの特性や普及率について触れ、ネットワーク上でのコミュニケーションは、主に縦のコミュニケーションではなく、横のコミュニケーションである。ユーザー同士がコミュニケーションを取り、情報交換をしていることを軸とし、ネットワーク環境の充実によるインタラクティブコミュニケーションについての実態と今後、どのような表現が可能となるかという考察をしていく。