私がなぜこのテーマを卒業論文のテーマに選んだのか。それは大学一年生の時、東京ディズニーシーでアルバイトをしていたとき聴覚障害者の方との出会いから始まった。そのとき私は質問されたことに対して筆談という形で対応したが、手話ができなかったため、上手く説明することができず悔しい思いをした。それがきっかけで手話教室やサークルに通い出した。そこで、多くの聴覚障害者の方と出会い、初めて聴覚障害者のおかれている手話・字幕放送の現状を知りとても驚いた。
地震などの自然災害が多い現在、多くの人が一番必要とする情報源は「テレビ」ではないだろうか。しかしそのテレビは、あくまでも"聴こえる"人を対象にした、いわゆる「映像と音声の総合メディア」になってしまっている。聴覚障害者の情報環境の欠落が少しずつ社会的に意識されはじめてはいるが、まだまだ完全なものではない。
そこで、映像メディアを使った聴覚障害者向けの専用放送がないかとインターネットで探してみたところ、CS(通信衛星)放送を用いた聴覚障害者向けの独自のメディア『目で聴くテレビ』というものがあることを発見した。『目で聴くテレビ』とは何か、それが聴覚障害者の情報環境を支援していくものとしてどのような可能性があるのかを探ってみようと考えた。
本論文では、聴覚障害者向けCS放送『目で聴くテレビ』の誕生から具体的なサービス内容、役割や特性などについて述べるとともに、利用者の声の分析を通して『目で聴くテレビ』の今後のあり方・課題を検討している。