日本建築学会は、「科学」「技術」「芸術」が三位一体となって発展することを目標に掲げている。しかしその目標の存在そのものが示すように、建築学の歴史は、建築を技術として見る立場と芸術としてみる立場の対立の歴史であり、また建設の実務に役立つテーマを研究し教育すべきとする立場と、学問それ自体を目的とする立場の歴史でもある。19世紀の建築家は、材料や構造の変化、機能や社会の要求の多様化の中で時代洋式を模索した。近代建築は、様式から空間へと、想像の視点を展開させつつ、社会的な要求にも造形的な対応をしていくことで、その問題に応えるとともに、近代建築はムーブメントとなりえた。こうした流れの中で、日本の建築家は、どのように学びつつ、これからの時代を切り開くことができるか。
本論では近代建築が本格的に展開を始めた19世紀を始めに、日本建築の発展の直接の原因になった西洋建築と日本の交わりを中心に、日本の建築学がはらんだ遠心力とそれにもかかわらず統合を希求する思いの歴史をたどりその特質の一端を示す。