インパルス応答を用いた残響特性の分析・合成に関する研究 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成17年度卒業研究概要集] [平成17年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
小泉 宣夫 ゼミ 平成17年度卒業論文
インパルス応答を用いた残響特性の分析・合成に関する研究
牛田 廣尚

近年、コンピュータの普及によって、音楽制作の環境も変わってきている。特にDSP技術の発達によって、音を加工するエフェクト効果は昔に比べ、飛躍的に進歩している。

そこで本研究は、エフェクトの中でも代表的な残響に関するパラメーターに着目した。現在、主に使われている手法は、あらかじめ残響の空間パラメーターがプリセットしてあり、それを選択することで、選択した空間の残響効果が得られるというものである。しかし、その手法はプリセットされている空間しか再現できない。

今後は、いろいろな場所の空間残響を自由にシミュレーションできることが望まれる。この研究では空間の残響効果のシミュレーション方法として、インパルス応答を実際に測定し、それをドライソースと合成させるという方法を提案し、考察した。

また、実際にインパルス応答測定と同じ環境でドライソースを再生し録音したものと、波形を比較し、さらに聴感的に比較することにより、再現度の検証を行った。その結果、測定したインパルス応答とドライソースを合成させる手法は、その空間内でドライソースを再生することとほぼ同じ残響効果が得られることが確かめられた。だが、実際の空間では、風の音であったり、周りの騒音であったりと音の聞こえ方を変える要因がある。残響効果自体はしっかりシミュレーションできていても、実際のものと聞こえ方は変わるということもわかった。

この手法の再現度を左右するものはインパルス応答の測定のクオリティであり、測定精度の向上によって、よりリアルに空間の残響効果を再現できるようになるのであろう。