人口13億人の巨大な内需市場をもつ中国は開放政策の実施以降、年平均9%以上の高成長を記録しており、2004年度も9.5%という高成長を達成した。このような経済発展に伴って中国のIT 産業1も飛躍的な発展を見せている。2002年には携帯電話加入者数は世界トップとなり、インターネットの利用人口は世界第2位の規模にまで成長している。また、ハードウエアについても携帯電話は世界の1/3が中国で生産されているなど、世界第2位のハードウェア生産国に躍り出ている。既にIT 大国として台頭している中国であるが、そして広東省東莞市を中心とする珠江デルタは、近年台湾系電子部品企業の一大集積を得、「世界のパソコン工場」という称号を、いまや本家本元の台湾から奪う勢いとなっている。とくに、ここ一年で「外資ではなく、中国地場のローカル企業が急速に力をつけてきたのが真新しい変化だ。WTO 加入による持続的な市場開放、中国は徐々に非加盟国が受ける不平等な割当制限を受けることがなくなり、輸出国の共同の利益に協力することができる。同時に、中国経済は20年に渡る高度成長を経て、多くの優勢産業<優勢産業とは、生産費、生産コスト、品質などの面で他国より強い市場競争力を持つ製品及びサービスを指す>を形成してきた。主にIT産業での各種部品の生産と輸出を指す。現在中国はすでに世界最大のディスプレー、ケース、キーボードの生産国であると同時に、各種基盤類の生産においても世界トップクラスである。PC本体製品の販売も大量に国際市場に向けられることになるであろう。2008年の北京オリンピック、2010年の上海世界貿易博覧会などが開催されることによって、今後も高度経済成長が続くことが予想されている。これとともに、中国経済の牽引役であるIT 産業の世界におけるプレゼンスはより一層高まる見通しである。中国政府は2002年に開催された第16回全国代表大会において「情報化によって工業化を導き、工業化で情報化を推進する」と言論するなどIT産業を未来の核心産業として育成することを明確にしている。本稿ではこのように急速に発展している中国IT産業に関連した政府の政策、各分野の現状と展開について概観してみる。また、中国IT 産業の今後のさらなる成長を占ううえで非常に重要なファクターといえる中国のR&D(研究開発投資)の現況と今後の展開についても報告する。