ハイセイコーやオグリキャップなどのアイドルホースは、もともと大井と笠松という地方競馬出身馬である。その馬たちが活躍するたびに、競馬熱が過熱し、競馬ブームとなってきた。特に、オグリキャップなどは、バブル期と重なり、地方競馬も中央競馬とともに入場人員、収益などは絶頂期だった。今も昔もメディアの露出、認知度、人気ともに中央競馬には敵わないとは思うが、昔からアラブ競馬が主流の地方競馬において、サラブレッド中心の中央競馬にはない魅力があったのだ。イメージとしては、中央競馬は当時の野球で言うセ・リーグ、地方競馬はパ・リーグのような印象だ。しかし、現在、アラブ馬も衰退し、地方競馬もサラブレッド主流の競馬になってきた。これでは中央競馬との内容でほとんど大きな違いはなくなってしまい、実力ともいえば、とてもではないが中央競馬には適わない。中央競馬との交流競走も増えた今、10回対戦したら、1〜2回地方馬が勝てばいいくらいで、ただの中央競馬の2軍的な印象しか持てなくなってしまった。
問題の売上は、1991年度の9862億円をピークに減少し、入場者数は同じく1991年度の1466万人以降、減少を続けている。(入場者数の過去最高は1974年度の2580万人)いまの状況では、とてもではないが歯止めが掛からない。元来地方競馬とは、地方自治体に利益の一部を納付し、地域を活性化させる役割がある。これまで地方競馬がもたらした施行者収益金の一部は、第一国庫納付金、第二国庫納付金、あるいは特別国庫納付金として、または一般会計への繰出し金として、地方財政の重要な財源などに充てられてきた。その内容は多岐にわたるが一部をあげると、小学校や中学校などの校舎や、公民館・図書館、保健衛生施設、消防警察施設の建設、都市計画事業、社会福祉事業、上下水道の整備、道路改良・街路灯などの土木関係、清掃事業、中小企業金融対策、災害復興、公害対策、産業経済振興などで、地方財政への総貢献額累計は(昭和33年度〜平成12年度)8,581億円にも上るのだ。ここ十数年はまったく役にたっていないどころか、赤字を増やしお荷物扱いだ。今すぐ廃止という声が聞こえてくるのもわかる。だが、前述のようにこれまで地方競馬が地域や自治体に貢献してきた事実があり、その功績は計り知れないのだ。
今地方競馬場では、冠レースという個人協賛レースや外厩制度、薄暮競馬の実施、インターネットでの馬券販売、レース動画、ライブ中継を配信など、ファンに興味をもってもらおうとさまざまな努力をしている。そして2006年度には、地方競馬全国協会が解散し、地方共同法人化して生ぬるい運営を変えようとしている。ようやく重い腰を上げ始めた地方競馬、残念ながらもう手遅れに近い状態にいると思う。しかし、今までの歴史で競馬を盛り上げた中に、奇跡の復活劇がある。地方競馬にはオグリキャップという笠松出身の偉大なスターがいた。限界説の流れていた1990年の引退レース「有馬記念」で、それまで凡走を繰り返してきたオグリが武豊を背に、奇跡的な復活の勝利をしたのだ。これにより、空前の競馬ブームが一気におとずれた。オグリを育てた地方競馬が、今度はオグリに習い、"奇跡の復活"をしてもらいたいと思う。