この作品は、千葉県佐倉市の「国立歴史民俗博物館」を、高校生レポーター2名が訪ね、同館の展示活動の内容や方法について紹介したものである。
同館は、日本の歴史と文化について総合的に研究・展示する国立の博物館であり、「歴博」の愛称でも親しまれている。延床面積約3万5千平方メートルという大規模な施設のなかには、原始・古代から近代に至るまでの歴史と日本人をテーマとして、実物資料や精密な複製品、模型などが展示されており、多数の専門研究者を擁して調査・研究活動にとりくんでいる。
映像レポートでは、まず、「歴博」の展示施設が、大きく5つの展示室に分かれていることを示す。高校生レポーターは、同館の久留島教授の案内のもと、それぞれの展示内容や、その方法にあらわれている「歴博」の考え方について学びながら、各展示室を順番に歩いていく。番組構成もこれに従って、第1展示室「旧石器-奈良時代」、第2展示室「平安-安土桃山時代」、第3展示室「江戸時代」、第4展示室「日本の民俗世界」、第5展示室「19世紀後半-20世紀はじめ」の順に各展示室を紹介していく。最後にスタジオで出演者が、「歴史の勉強とは年表を覚えることだけではなく、昔の人の気持ちに想いをはせること」、「歴史への想像力を膨らませることは、今を生きる私たちを豊かにすること」とコメントして番組をまとめる。
久留島教授の解説によれば、この博物館の展示の特徴は、歴史的なヒーロー、ヒロインを主役に置かず、それぞれの時代の庶民の目線から歴史を示していることだという。ジオラマなども、ただ正確な描写につとめるだけでなく、そこにストーリーの流れがあり、当時の人々の生活や風俗について、豊かな想像力がひろがるように工夫が凝らされている。番組では、同教授の解説のポイントとなる言葉を、各展示室の展示に重ねながら構成したことで、同館の優れた展示活動の魅力を立体的に紹介するようにした。展示品やジオラマについては、後日、再取材をおこなって、その細部をカメラにおさめて番組中にインサートしていったことで、久留島教授の解説の意味するところを、より明確に表現することができたと思う。
視聴者からの評価としては、番組の構成が展示室ごとに進行することで、理解しやすいというものが多く、同館を訪れてみたいというコメントもあった。
反省点としては、5つある展示室のうち、第1から第3までの展示室は時間を割いたが、第4第5展示室についての紹介時間が短くなり、簡単な紹介にとどまってしまったところである。
この番組の制作を通じて、「庶民から見た歴史」という切り口から歴史研究をおこなっている「歴博」の理念に感銘をうけ、貴重な学習体験となった。ディレクターとして制作にあたり、高校生や取材先の方々とのコミュニケーションを図るなかで、人間的にも成長できたと感じている。