この作品は、東京情報大学教授のケビン・ショート先生と佐倉南高校の高校生3名が、千葉の身近な里山を歩き、その自然や文化について紹介したものである。
東京情報大学教授のケビン・ショート先生(文化人類学)は、アメリカに生まれ、1972年に来日以来、日本の里山の自然と文化を研究し、環境教育にとりくんでいる。
映像レポートは、佐倉南高校のすぐ近くの里山から自然観察がはじまる。ケビン先生が草花や昆虫などを、つぎつぎに解説していき、高校生たちが見入る。「自然に目をむけ、そこに発見や知識が得られると、さらに観察が深まり、一年中、自然を楽しめるようになる。そのことに期待感を持ったり、季節が変わることを敏感につかむことができるようになる。それこそが自然観察の目的」、「自然を楽しむということは、理科ではなく、フィーリング。自分の精神状態をまわりの環境にあわせるということが本当の意味で自然を楽しむということ。現代人が精神的に苦しんでいるといるのは、自分の周囲や自然との関係が絶ち切られているということ。こういうところを散歩して、植物の名がわからなくても、この時期になるとこういう植物の花が咲く、この時期にはこの植物の実がなる、ということを体験していくだけで、まわりの自然との連続性を感じることができ、それがわれわれの心を癒してくれる。」とケビン先生は語る。
探索の後半では、村のなかで祀られている大木を見たり、素朴な石仏に手をあわせたりしながら、さらに山の奥へと足をすすめる。藪こぎをしてたどり着いた場所で小さな祠を発見して、こここそが精霊がやどる場所であり、宗教とは関わりのない、大地のスピリチュアルがたちのぼる場所だと語るケビン先生に、レポーターとスタッフは深い感動を覚える。
この作品では、里山の自然と文化の探索を通して、視聴者に身近な環境の大切さを考えてほしかった。構成上のポイントは、ケビン先生の語りを、どのように編集しうまく伝えるかというところにあった。丸一日かけての探訪ではほかにも興味深い体験が数多かったが、時間的に割愛せざるを得ないところも多く、もったいない思いがした。
視聴者からの評価としては、「ケビン先生の人柄やユニークさがよくつたわり面白い」という意見が多かった。「カメラのブレが気になる」、「昆虫(毛虫)のクローズアップが気持ち悪い」などの意見もあった。カメラのブレはスタッフの非力さとして反省があるが、昆虫のアップを気味悪く思う視聴者にこそ自然を理解してもらいたかったという思いと、視聴者が嫌うものは放送であつかうべきではないという思いとが交差し、考えさせられた。
作品制作を通じて、さまざまな発見や感動があり、自分自身も里山の自然と文化を深く学ぶことができたことは大きな収穫であった。またケビン先生のフィールドワークの姿を取材して、教室で授業を受けているときとは違った、さらに魅力的な面に接することができたことが、とても嬉しい体験であった。