この作品は、八街市にあるウエスタン乗馬クラブ『エルドラドランチ』を3名の高校生レポーターが訪ね、彼女らの乗馬体験の様子や、クラブオーナー土岐田勘次郎さんのウエスタン乗馬の妙技を紹介するとともに、土岐田さんから「乗馬を通じた人間教育の大切さ」について、くわしくお話しを聞いたものである。
このウエスタン乗馬クラブ『エルドラドランチ』は、ウエスタン乗馬の第一人者である土岐田勘次郎さんが運営する乗馬クラブである。ここで育てている馬は約70頭。自然の中で馬と触れあることができ、初心者か経験者かを問わず、一般の人でも乗馬の楽しさを体験できる。
映像レポートでは、まず高校生レポーターが、馬小屋を見学し、馬に触ったり給餌をして馬と親しむ。つぎに、馬のハミのつけ方を教えてもらい、馬場に出て、一人ずつ乗馬を体験する。新鮮な体験に高校生たちが歓声をあげる。
ここでスタジオシーンが挿入され、高校生レポーターが各人の乗馬体験の感想を語った後、現地で番組ディレクター(金沢)が土岐田さんにインタビューした映像を挿入しつつ、その内容をまとめていく。土岐田さんが語る「乗馬を通じた人間教育」というユニークな思想について、スタジオの高校生レポーターがフリップを示して、「鏡」、「進化」、「命令」という3つのキーワードに要約し、それぞれのテーマごとにスタジオで考える。そして、馬という生物と人間との不思議な結びつきの意味や、「馬に命令し教えることで、人間も学び成長していくことができる」という、乗馬教育の意義を明らかにしていく。
さいごに、土岐田さん自身による、ウエスタン乗馬の迫力ある模範演技を紹介して番組を終える。
この番組では、馬の素晴らしさだけでなく、馬と人間の関係を見つめてきた土岐田さんの、深い教育観を紹介することが大きなテーマとなった。スタジオで出演者がフリップを用いて明解なキーワードを示したことで、土岐田さんのお話しの核心部分を伝えることに、ある程度、成功したのではないかと考えている。土岐田さんへの30分におよんだインタビューの内容を、十分の一の時間の中に凝縮するということは困難な作業で、インタビュー部分の編集に際しては、全ての口話をワープロで書き起こし、要点となる部分を抽出し、その順序を入れ替えて編集台本を作成した。これによって、土岐田さんのお話しの中心がどこにあるのかを、浮かび上がらせることができたと思う。
番組の評価としては、乗馬の楽しさや、土岐田さんの乗馬演技のすごさが印象に残ったというものが多かった。土岐田さんのお話しの内容については、よく理解できたというものと、あまりわからなかったという反応とがあった。やはり、もっと時間があれば、より丁寧に土岐田さんの真意を伝えることができたのではないかと思われた。
番組の制作を通じて、ディレクターとして責任を持って作品を完成させたことで、ひとつのものを作り上げる喜びというものを学ぶことができた。また、土岐田さんとお話しができたことで、世界を見てきた人の言葉には、やはり深みがあると感じ、その教育観・人間観に触れることができたことは、自分を見つめなおすよい体験になったと思っている。