この作品は、房総の山、三島で育まれた伝統芸能の「棒術とかっこ舞」について紹介したものである。県立中央博物館分館・房総の山のフィールドミュージアムが主催した見学会に、当番組のスタッフと高校生レポーター2名が、一般の参加者とともに同行して制作した。
映像レポートはまず、見学会の参加者が、君津市立三島小学校に集合し、見学のポイントや、この地方の文化や伝統について、レクチャーを受ける様子から紹介する。次に参加者は、歩いて三島神社に移動しながら、神輿や「のぼりさし」が、神社に入っていく様子を見学する。そして境内で、棒術とかっこ舞の奉納がおこなわれる。ナレーションを加えて、棒術のカタや、「かっこ舞」についての解説をおこない、棒術を実際に演じた人にインタビューして、このような地域文化を守っていくことの意味などについて聞く。最後にスタジオで、高校生レポーターが「伝統芸能というのは、それを支えている人々にとっては、現在の自分たちのコミュニティを形成するための貴重な場になっていると思った」と述べ、司会者は「この土地に生まれたら、必ずこの棒術を習得するという伝統、運命のようなものか」と感嘆する。そして、このような地域文化の見学会や自然観察会などを実施しているフィールドミュージアムの活動の意義についても述べ、番組を終える。
この作品で描きたかったことは、第一に房総の山に今も息づく「棒術」「かっこ舞」というすばらしい伝統文化が継承されていることであった。棒術の演舞のシーンは、複数のカメラでその動きを追い、真剣で竹を切る瞬間などを迫力ある映像で表現できたと考える。第二に、このような見学会などを精力的に実施しているフィールドミュージアムの活動についても認識しておきたいということであった。
番組の評価としては、「すばらしい伝統芸能を知ることができて良かった」、「実際に見てみたい」、というものが多かった。「地元の若者達が伝統芸能を受け継いでいることが素晴らしい」という意見もあり、番組を通じて、伝統芸能を演じる人たちの地域への愛情、気持ちの深さが伝わったものと考える。
この作品の制作を通じて、各地には地域に根ざしたすばらしい伝統芸能があること、それを伝承していくことによって、地域社会の連帯感、文化というものが育くまれているのだということがよく理解できた。