近代化とマス・コミュニケーションの働き・変化を中国をモデルとして考察した。
現在の中国は、近代化による先進国からの影響に耐えて独自の文化を形成する過渡期である。権力と民衆の媒介者であったマス・コミュニケーションも、共産党指導下にあるとはいえ、「上位下達」機関から「下情上通」(「下位上達」)機関への萌芽が見られるようになった。例えば、新聞において、党機関紙の発行部数が低下し、読者離れが進んだ。80年代以降、市場経済化の進展とともに、新聞の独立採算制が求められるようになり、従来から共産党の宣伝部門で文化・社会情報を掲載していた夕刊紙が、海外や国内の民間企業と提携することによって、「商業化」への転進を図り発行部数を伸ばしている。それに対して、党機関紙も徐々にではあるが、誌面刷新に乗り出し、「競争原理」が働き始めている。こうした現状から、今後の課題として、能動的な読者の登場が、中国独自の近代化形成への手がかりとなると考えられるので、その動向を観察したいと考える。