本研究では人間はどのような和音を「心地良い」と感じるのかを調べた。実験内容は二音からなる二種類の和音を聞かせ、最初の和音に比べて後の和音が「心地良いか」「心地悪いか」を判断してもらうものである。平成16年度卒業論文にて桝田がこのような実験を行っている。
桝田の実験では和音の低いほうの音を440Hzから+-10%の範囲でランダムに変化させた実験を先に行い、和音の低いほうの音を440Hzに固定した実験を後に行った。440Hzに固定した実験は、仮に440Hzを「ド」とした場合、440Hzを主音とし和音の高いほうの音に着目してしまい音階を意識しやすく、また高いほうの音が「シ→ド」や「ド♯→ド」のように主音に近づくと「心地良い」と判断しがちになる。つまり1200セント(オクターブ)で心地良いと判断するということは旋律を判断しがちになるということである。よって桝田の研究では、440Hzをランダムに変化させているため旋律を判断しにくくなっている。そしてその実験を行った後に、440Hzに固定した実験を行っている。そのためより音の移り変わり(旋律など)に対して「心地良いか」「心地悪いか」を判断してしまった可能性がある。よってこの問題を解決するために今回は2つの実験を逆にして行った。
楽器経験のある被験者は、440Hzに固定した実験と440Hzをランダムに変化させた実験で、1200セントを心地良いと判断し、その両脇が心地悪いと判断しているという結果となった。そして440Hzに固定した実験のほうが1200セントとその両脇の差が大きいという特徴があった。その特徴は桝田の楽器経験のある被験者の実験結果と一致するという結果となった。そのため今回の実験で音の移り変わり(旋律など)に対して「心地良いか」「心地悪いか」を判断してしまう原因は実験の順番ではないことが分かった。
また、桝田の実験結果の特徴と今回の実験結果の特徴が一致したことで、桝田の実験結果は一般性がみられることが確認できた。