江戸切子-時の権力者と工芸品の関係- [東京情報大学] [情報文化学科] [平成16年度卒業研究概要集] [平成16年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
松田 喜好 ゼミ 平成16年度卒業論文
江戸切子-時の権力者と工芸品の関係-
大野 智明

本論は、ガラス器の伝統文化であり、江戸時代から約150年に渡って今日まで受け継がれてきた「江戸切子」を挙げ、日本のガラス文化がどのように変化していったかについて考察したものである。江戸切子とはガラス器に切り込みを入れたり、切り落としたりして出来る伝統工芸品である。江戸切子は日本のガラスの技術革新に大きく関わってきたものである。そこでまず、ガラスの起源について調査し、日本にどのように伝来してきたかを調べた。次に時代ごとに、ガラスがどのような背景で今日まで伝わってきたかについて調べた。その中で江戸切子に注目し、これに関わる人物、生まれた背景や時代ごとの特徴や技術の変遷、歴史について明らかにした。さらに、江戸切子と薩摩切子を比較し、その技法やつくられた環境、歴史の相違から時の権力者と工芸品の関係を検証した。本来の江戸切子とは、明治前期までの手摺りを中心とした技法でつくられたカットグラスのこと、もしくは技法そのものを指す。今日ではそれらの技法はほとんど使われなくなった。しかし、それ以降の新技術によってつくられたものも伝統工芸として認められ、江戸切子という名で受け継がれている。ガラス工芸に関しては日本だけでなく世界的にも、突然技術が勃興し廃絶してしまうことがあった。そのことに当てはまらず、江戸切子はそれを後世に残そうとする人の意志が働くことで今日まで伝わってきたといえる。