視覚障害者のための副音声についての研究 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成16年度卒業研究概要集] [平成16年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
伊藤 敏朗 ゼミ 平成16年度卒業論文
視覚障害者のための副音声についての研究
西 智子

本論は、映像作品における副音声の役割を研究し、その課題や可能性について考察したものである。副音声とは、健常者と視覚障害者が同じように映像メディアを楽しむために、主音声とは別のチャンネルを用いて、映像の情景の解説などを提供する仕組みである。別のチャンネルを用いる点から副音声チャンネル、日本語音声ガイドとも呼ばれる。近年では、字幕が読みにくいこどもたちや視力の衰えた高齢者の情報保障のための方法としても関心を集めており、アメリカでは年間500本から1000本の副音声付の映画が作られているが日本での副音声付の映像番組の提供数はまだ少なく、その充実が求められているところでもある。本研究ではまず、このような副音声の仕組みやサービスが、どのように始まり、現在はどのように用いられているかについて調べた。その結果、現在、わが国で劇場公開される映画で副音声(日本語音声ガイド)が提供されるものはごく少なく、視覚障害者が健常者と同じように映画館で気軽に映画を楽しめるような環境にはなっていないこと、その理由として技術面・費用面での問題があることなどが明らかになった。一方、そのような情報サービスの実現のためのボランティア活動があることもわかった。しかし著作権の問題や、フィルムとの同期化の問題などがあり、ライブ形式や同行鑑賞形式で行われていることがわかった。つぎに、視覚障害者がどのくらい副音声付の映画を観ており、それをどう感じているのかを調査・分析し、副音声に求められている情報提供の内容や方法について検討を加えた。その結果、副音声情報の提供においては、一般公開されている映像への副音声の拡大と、DVDの特典として日本語音声ガイドを増やし、作品の内容に限らず副音声が付けられることが必要である。これをふまえ健常者の副音声に対する知名度や理解を深めることが重要であるとわかった。つぎに健常者が副音声付の作品を観るとどのように感じられるのか調査し、検討した。その結果、副音声(日本語音声ガイド)は視覚障害者の為だけでなく健常者にとっても詳しい映像情景を知るために効果的であり、これからますます注目されていくであろうと考えられる。メディアの技術発達が進む中で情報弱者に対する視点は忘れてはならないことだと考えられ、情報保障の方法に対する健常者の理解を深めることが重要である。