映画カメラはそれぞれのカットごとに、表現意図に対して最適な撮影位置ポジショニングされ、カットが変われば場所を移動することができる。すなわち映画言語においては、そのシークエンスの中で、カメラはどのような場所にでも存在でき、かつどこにでも存在しないという、カメラユビキティ(カメラの偏在性)の原理が了解されている。この原理の援用により、観客は場所や時間を超越して物語世界を把握することができる。本研究は、いくつかの映画作品の中から、カメラユビキティの原理が用いられたことで、観客が物語を把握する手助けとなる表現方法を分析し、感情を動かす表現のセオリーとしてまとめようと試みたものである。