舞台における役者の再現性〜殺陣〜 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成16年度卒業研究概要集] [平成16年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
石井 政弘 ゼミ 平成16年度卒業論文
舞台における役者の再現性〜殺陣〜
千賀 かおり
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本研究は、役者の動作の再現性について、「殺陣(たて)」という表現方法の一つを用いて研究した。殺陣は剣道の攻撃性と演劇における「見せる」目的を併せ持つものである。

被験者は女子大学生4年生で役者歴4年、殺陣歴半年程度である。被験者に縦2.0m、横2.0m、高さ2.5mの空間を想定しそのエリア内で初動作含む11の動作をさせた。これは基本の型と呼ばれ、初動作の構えから切り下ろし、突きなどの剣道の基本的動作を含み、最終動作の構えに終わる11の動作で相手がいると想定して剣を使う動作である。これを3回、実際の演劇公演と同じ時間帯で反復させ、それを撮影した映像データをもとにDLT法によって分析に必要な画像、3次元数値を算出した。

この結果から3回の試行の位置的なずれ(3次元空間における2点の距離)を分析した。分析するにあたっては、DLT法で使用する身体部位23、の内、@剣先、A右手先、B右足先の3つの部位に重点を置いた。これは常に相手に向かう重要な部位のためである。その結果から、以下の事が考えられる。

3回の試行において、各動作での位置には大きなずれがあるが、初動作から動作を重ねてもその数値に大きな変動はない。たとえば右足先における試行1と試行2のずれは、初動作のずれが約33cmであったところ、最終動作では約32cmと、初動作と最終動作でずれがほぼ変わっていない。位置的なずれは大きいが動作そのものには変化が少ないため、舞台上では同じように見えるであろう。大人数での舞台であれば、位置的なずれは他者との間隔にも影響し、客の目にもわかりやすくとても重要である。しかし、少人数での舞台であれば舞台上での位置よりも個人の動作に目がいく。そのため、この役者は大人数での舞台よりも少人数での舞台経験が多いと考えられる。

もっともずれが大きかったのは試行1と試行3ではなく試行1と試行2であった。試行1と試行2ではあいた時間は他よりも少ないため、実験前に考えていた時間があくほどずれが生じるという結果にはならなかった。被験者は殺陣歴は少ないためより熟練した殺陣師であれば違う結果となったかもしれない。