「忍術の源流を探る〜立川文庫の世界に触れて〜」 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成16年度卒業研究概要集] [平成16年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
乾 照夫 ゼミ 平成16年度卒業論文
「忍術の源流を探る〜立川文庫の世界に触れて〜」
島田 健太朗

「忍者とは一体何者か?」

この問いに対して、敵勢力内部に侵入して情報を得る、重要人物・危険人物の暗殺をはかるなど、いわゆるスパイの姿をイメージする人が多いだろう。この姿が、戦国時代などに暗躍していたとされる忍者の実像である。

しかし、それと同等以上に思い浮かべる人が多いのが「忍法(忍術)を使う忍者」の姿だろう。この姿を思い浮かべるのには、小説・テレビ・映画など様々なメディアを通じて、忍者が忍法を使って消えたり、炎を出したりして、敵を倒すといったヒーローのような姿として描かれていることが起因している。もちろん、この姿は忍者の虚像である。

では、何故「忍法(忍術)を使う忍者」の姿が現代に存在しているのだろうか。そこで忍者について少し調べると、明治末期に創刊され、大正時代に人気を博した「立川文庫」に登場した『第四十編 真田三勇士忍術名人猿飛佐助』(以下『猿飛佐助』)が「忍法(忍術)を使う忍者」という忍者像に大きく影響したのだと思われる。

猿飛佐助は、講談で豊臣方の武将真田幸村に仕える「真田十勇士」の一人として語られた架空の人物であるが、「立川文庫」の『猿飛佐助』で忍術を使って大活躍する姿が描かれたことから、当時の少年たちの圧倒的な支持を得て、忍術ブームが巻き起こすきっかけとなった。これにより、忍術の存在が大衆に浸透して、その後の小説・漫画・テレビなどのメディアでも描かれていく中で、現代の「忍法(忍術)を使う忍者」という忍者像が出来上がっていったのだと考えられる。

本論文では、「忍法(忍術)を使う忍者」という忍者像を確立させるきっかけとなった「立川文庫」とは一体どういうものだったのであろうか、その全貌を明らかにしていきたい。