西村 明 ゼミ 平成16年度卒業論文
音の移動時間とスピーカーの開き角度が音像移動の滑らかさに与える影響
布田 祐平

左右2チャンネルの音源を聴く場合のスピーカーはステレオ配置が用いられる。ステレオ配置は、左右に2つのスピーカーを配置するもので、2チャンネルで収録された音源を聞くときに用いられる配置法である。これに対して近年のDVDメディアにおけるマルチチャンネル方式の場合はスピーカーを左右、中央、後方に配置する。本実験は、マルチチャンネルの左前方と左後方の2つのスピーカー間で感じられる「音像の滑らかさ」に焦点をあてた。刺激音が聴取位置の左前(聴取位置の正面から見て左30°)から左後方へ移動するとき、左後方スピーカーをどの配置すれば音像移動に滑らかさを与えるかを検討した。左後方のスピーカーは開き角度65°,100°,135°に設置する。左前方と左後方のスピーカー間で刺激音の音像が移動し、この刺激音を聴いて被験者は音像の滑らかさを回答する。その回答されたデータに基づいて、刺激音の移動時間とスピーカーの開き角度が音像の滑らかさに与える影響を求めた。

実験1の結果は被験者Hを除いて、開き角度135°と音像移動の時間9秒は音像の滑らかさが感じられない傾向が現れた。実験2では、音像移動であまり滑らかさが与えられない条件を省略し、開き角度は65°と100°,刺激音の移動時間を3,6秒の条件に絞って再度実験を試みた。実験2の結果、開き角度65°と100°と刺激音の移動時間3秒の場合に音像の滑らかさが感じられる結果になった。これらから、ITU(国際電気通信連合)勧告で推奨されているマルチチャンネルスピーカーの配置法でリアスピーカーの位置(開き角度100°から120°の間)は、音像が左前から左後ろに移動する場合でも滑らかな音像が感じられる位置だと考えられる。つまり、リアスピーカーを100°から120°の位置に配置するのは妥当と言える。