音楽信号と自然環境音における超音波と聴こえとの関係   〜一対比較法による検討〜 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成16年度卒業研究概要集] [平成16年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
西村 明 ゼミ 平成16年度卒業論文
音楽信号と自然環境音における超音波と聴こえとの関係   〜一対比較法による検討〜
佐々木 直喜

人間の感受性に影響を及ぼす音(空気振動)の周波数上限は20kHzとされているが、商業音楽制作の現場で実際に高品質な音響素材にたずさわるアーティストや技術者の間には、20kHz以上の高周波成分はあきらかに音質に影響するという見解がある。成毛は高周波を含む音と含まない音との間に音質差を有意差をもって検知することができ、「実験前に聴く訓練をすることで音質差を感知できる」という結果をだした。

本実験は成毛の実験の追検査であり、高周波を含む音と含まない音との心理的音質差の聴こえを検証したものである。成毛の実験との違いは、被験者2人で行ったこと、また実験に使う音試料に自然環境音を追加した点である。

実験1では音試料にブルガリアンヴォイスを、実験2・3では虫音を多く含む自然環境音を採用した。実験1では被験者Aは、高周波を含む音(FRS)は含まない音(HCS)より「刺激的である」「厚い」ということを有意差をもって感知した。それらの結果は成毛と同じであるが、成毛は他の評価語においても音質差を感知できており、その点で成毛と同じ結果になったとはいえない。被験者Bについてはどの評価語においても音質差を感知できなかった。

実験2・3では被験者A、Bとも音質差を感じることはできなかった。

これらの結果、20kHz以上の高周波成分を含む音の感知は人によって異なるということと、自然環境音のような強弱のない音では感知は難しいのではないかということが考えられる。

今回の実験では被験者は2人しかいなかったことや、評価語がわかりにくかったなど、改善すべき点があった。今後は被験者を増やす、評価システムの改善、さまざまな音サンプルを試すなど、それらの課題を考慮し追検査を行なうべきである。

オーディオ業界ではコンパクト化、小容量化が目立ち、音質の劣化が心配される。可聴域音だけを聴いていると脳の特定部分の神経活性が低下する可能性があることを指摘している研究者もいる。高周波成分についての研究はまだ途上であるが、注目すべき分野である。