本論は、現代の映画界、テレビ界で大活躍を見せている脚本家・宮藤官九郎について、その人物像と作品を通し、宮藤官九郎の生み出す作品の特色や魅力を脚本とドラマを照らし合わせて研究・分析したものである。
宮藤官九郎は、テレビ界・映画界での脚本家としての活躍のほか、時に俳優業の一面もあり、とてもバラエティーに富んだ人物である。宮藤官九郎の作品は"原作の良さを踏まえながら、独自のクドカンワールドを炸裂させる"スタイルをもっていて、視聴者の多くがそのオリジナリティーあふれる作品に魅了されていくのである。
本研究では、その宮藤官九郎脚本の代表作ドラマである1作品「木更津キャッツアイ」を題材として、脚本とそれを映像化したものとを比較し、文章であらわしたことが映像ではどのように見えたり、感じたりするのか、映像表現の方法をいろいろな視点を通して考え、分析した。そこには脚本="文章"だけでは想像できなかった二重構造での高速リバース映像の技術や、脚本の文中ではわからなかったシーンとシーンをつなぐ映像の扱い方にも多くの工夫があった。それらのひとつひとつのシーンに隠された表現の工夫から、この作品のストーリー展開がとてもテンポ良く感じられた。このような研究を通じて、宮藤官九郎の人物とその作品の魅力・おもしろさに改めて触れることができ、また、脚本="文"から映像へという表現方法の違い・特色が多くの視点から感じることができた。