映画の歴史のなかでは、さまざまな特色ある作品が生み出されてきたが、本論はそのなかでも、劇中の時間軸の表現に特徴がある作品をとりあげて研究したものである。時間的表現メディアである映画では、おおくの場合、時間的にもっとも最初の場面から映画が始まり、もっとも最後の場面で映画が終わるのが一般的であるが、ここにとりあげた映画の物語の時間軸は、本来ある時間の流れのとおりには進行せず、さまざまに変化することで、観客に驚きや謎をもたらして作品的に成功しており、映画表現の新しい可能性を示した。これらの作品のストーリーの時間軸を表にしてまとめ、共通するポイントや演出上の特徴などを明らかにするとともに、こうした斬新な表現方法から、その映画が何を伝えようとしているのかについて監督のコメントや文献などから探る。また、このような作品の表現方法が、これからの映画にどのような影響をあたえるかについても考察する。