本論は、日本人の英語力が低い原因を研究し、日本の英語教育のありかたについて考察したものである。はじめに、日本の英語教育の背景として、日本の学校教育の変遷とその歴史的・文化的背景を検討する。ここでは、江戸時代の藩校や寺子屋での教育が、儒学や朱子学などを学ぶために、外国語を読み書き中心に教えていたこと、また、学校教育の体制に儒教思想などの影響が残り伝統的性格のものになったことを明らかにした。つぎに、文部省が外国語教育の改革として平成元年より行っている主な施策を取り上げ、現在の達成状況を検証する。さらに、日本国内で英語教育を進める際に能力強化の妨げとなる問題点について探る。その結果、文部科学省がカリキュラムの改革、外国人講師の導入などを積極的に行っているにもかかわらず、学生が英語教育に対してマイナス・イメージをもっていることや、教師が教科書選定に関わることができないため、充実した教育内容につながりにくいことが問題として挙げられていることがわかった。これをふまえて、問題点を改善することはもちろん、学生が外国語教育の目的を理解すること、21世紀に生きる日本人に求められる英語力を理解することが日本人の英語力の改革につながると考えられる。