本論は芸術分野でもとりわけ難解とされる現代芸術に焦点を当て、基本的な現代芸術の思想と社会的背景にあった商業主義を照らし合わせ考察する。初めに、現代芸術の始祖とされるマルセル・デュシャンの足跡をたどる。次に、現在の日本における現代芸術の潮流として(株)アールビバンと海洋堂を取り上げ、商業化が進む現代芸術において成功を収めている会社の経営方針=明確な顧客対象の獲得の図式を明らかにする。さらに、海外で活躍する現代芸術画家村上隆を紹介する。村上の持つ独自の半オタク的要素と現代芸術の商業主義的な面が合わさり、海洋堂との共同制作のもと、現代社会でも通用する文脈を持った現代芸術が創造された。これらは海外で高い評価を受けたのを機に日本でも幅広く知れ渡る事になるのだが、広がり過ぎた現代芸術は意義を多角化した挙句、閉塞された分野となる。終章では、このような問題に対し、今後の現代芸術活動に必要な要素として日常生活における芸術との交流を指摘する。なかでも必要なのは、商業的側面から来ている根本的な芸術改革に対する社会の理解である。そして、大きく変容した現代の大量消費社会において現代芸術が生き残るには、極度の商業主義が生み出した顧客層化と、芸術という商品の販売経路の大衆化という二点に見られる改革の思想が必要と考えられる。