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柴 理子 ゼミ 平成15年度卒業論文
映画館を通して見る地域社会の変容-前橋市を中心に
塩澤 章恵

本論は、戦後の群馬県前橋市の地域社会に視点を据え、前橋市民の一番の娯楽の場であった映画館を通して市民生活の変容を考察したものである。まず、前橋市の歴史的研究を行い、戦後の市民に心のゆとりを与えた映画館との関係性や、当時の映画館の様子について述べた。つぎに、前橋市にある映画館の6割を占める野中興業について紹介し、野中興業の誕生から戦後の復興、そして映画の黄金期と呼ばれた昭和30年代までを追った。さらに、市民の都市郊外への移動と地域社会の変化について考察した。相次ぐ既存映画館の閉館や中心商店街の衰退の要因は何かを検証し、これからの中心商店街の活性化には何が必要かを考察した。ここから得られた結論として、テレビ放送の開始により家庭にテレビが普及したこと、市郊外への大型ショッピングセンターやシネマコンプレックス(複合型映画館)の建設により、人々が市郊外へ移動したことを指摘できる。また、前橋市民の一人あたり自動車保有台数が1.6台という数字が物語るように、マイカーでの都市郊外ショッピングが一般化していることが、中心商店街の衰退の第一の原因となっていることもわかった。このような衰退に歯止めをかけるために、中心商店街の活性化に向け今日までさまざまな催し物が行われてきたが、これといって起爆剤になったものがないのが現状である。行政側も群馬県人口200万人達成記念の映画の製作、群馬交響楽団の創設、高崎映画祭の開催など、いくつかのイベントを試みたが、中心商店街の活性化には至っていない。しかし、商店街の自主グループによる映画を中心とした復興への取り組みも始まっており、こうした「草の根」的な活動が今後の活性化に向けての明るい材料といえる。