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柴 理子 ゼミ 平成15年度卒業論文
ジャポニスムによるフランス美術の変容
大谷 聡美

本論は、19世紀後半の西欧芸術に見られる日本の影響現象であるジャポニスムを取り上げ、それがフランス美術にどのような変容をもたらしたのかを考察したものである。まず、西欧で日本への関心が高まった時代背景を調べ、日本美術がどのような形で受け入れられ、どのような影響を与えたのかを検討した。この現象は絵画・建築・装飾などから文学・料理にいたるまでの諸例が報告され、中でも、日本では庶民的な分野である浮世絵や工芸品などの影響が顕著に見られた。その一方、仏画や仏教彫刻などの影響は乏しかったとされている。次に、印象派絵画と浮世絵を比較し、構図やモティーフ等の共通点を探り、フランス美術がどのように変容していったかを考察した。その結果、フランスでは版画において革新の動きが見られ、ポスターやガラス工芸にも独自の発展がみられたばかりでなく、現在でも受け継がれていることが明らかになった。日本への関心が単に異国趣味という表面的なものにとどまらず、フランスの芸術展開そのものと結びついていると言える。行き詰まりに来ていたフランス芸術が、空間表現や構図による日本的解決に活路を見出したと考えられる。また、自然との関わりも転換点を迎えていたために、日本的なモティーフにいっそう強く惹かれたと思われる。