本論文は、現在行われている日本の情報教育を批判的に論じると共に、オーストラリアとの比較から、小・中・高等学校年代における日本の新しい情報教育のあり方を考察したものである。まず、日本の情報教育に関する研究史を検討し、情報教育に関する議論が時代や技術の進歩と共に大きく変化していることを明らかにした。情報教育は平成15年度から高等学校で必修化されたが、その内容は何よりもまずコンピュータを使うことを前提にしており、諸外国における情報教育とは大きく異なっている。次に、オーストラリアの情報教育の変遷をたどり、現状を把握した。オーストラリアでは、12歳という早い時期から情報教育を行うことで成果を挙げている。また、「調査(Investigating)」「設計(Designing)」「製作(Producing)」「評価(Evaluating)」というプロセスを用いることで、学習者が自ら問題解決できるよう配慮されている。さらに、各教室に資料としてのインターネットやパソコンを設置することで、日常の授業が情報教育の成果を生かす実践の場となっている。このようなオーストラリアの状況と比較すると、日本では、情報教育の体系化、教室でのパソコンの活用の両面とも劣っており、日本の情報教育の問題点と課題が浮き彫りになる。こうした問題点と課題をふまえ、最後に、今後の情報教育のあり方について提言を試みた。情報教育の内容を様々な科目に組み込むことが必要であり、そのためには指導する側のスキル向上が不可欠である。ただし、情報教育における生徒評価の点は課題となるであろう。こうしたなかで、大学は情報活用の実践や地域の情報センターとしての役割を求められるようになると考えられる。