人間は目や耳などを使って自分のまわりの状況を知覚している。しかし普段見慣れているものが状況の変化によって異なって見えるといった現象が起きることがある。このような不確かな感覚の大きな原因の1つが「錯視」である。
錯視には様々な種類があり、大きさや角度などが異なって見える幾何学的錯視図形に注目し、その中でも有名な『ミューラー=リヤーの錯視』について研究した。『ミューラー=リヤーの錯視』とは線分(主線)の両端に、内向きの矢印がついた図形と外向きの矢印がついた図形の2つの図形を見比べたもので、矢羽根が内向きの図形のほうが外向きの図形より線分(主線)が長く見えるという錯視図形である。(図3-4・4-1)
このミューラー=リヤーの錯視に大きさや角度を変化させるというように、条件を変えることによって錯視にどういった変化が見られるのか、ということをプログラムやアンケートを作成し検証した。
検証した結果、「太さ」という点に着目した場合、細い・太いといった極端な条件のときに変化が感じられた。「長さ」という点に着目した場合、矢羽根の長さが短いときに比べ長いときの方が錯視が大きく感じられた。「角度」という点に着目した場合、矢羽根の角度が小さいときに大きな変化がみられ、大きいときにはさほど変化は感じられなかった。という結果になった。つまり、条件を変えることによって様々な見解や結果になるということである。
あるものを見てどう感じるかという「感性評価」、つまり100人いれば100通りの答えがあるように、人それぞれのものの受け止め方によって様々な見解や結果になると考えられる。