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西村 明 ゼミ 平成15年度卒業論文
ピアノ音の非調和性が最適オクターブ知覚に与える影響
若園 香里

ピアノでは、ピアノ線という硬い弦を用いているため、部分音が整数倍ではなく、非整数倍となっていることがわかっている。例えば、A3音(中央オクターブより1オクターブ低いラの音)の場合、第10部分音で基本周波数の10倍より25セント高くなっており、第22部分音では基本周波数の22倍より半音高くなっている。この部分音の非整数倍性がピアノ音らしい音色の重要な要因となっているため、ピアノ音では倍音とは呼ばず部分音と呼ばれている。

本研究では、この部分音の非整数倍性、つまり非調和性は、オクターブ音として合っているか合っていないかを判断する際にどのような影響を与えているのかについて調べるために、無響室においてヘッドホンを用い、非調和性を制御した合成ピアノ音を用いて聴取実験を行った。

まず実験1では、次数の高い部分音の有無、あるいは部分音の非調和性のいずれか一方、またはその両方が、影響を与えていることが明らかとなった。また、実験条件によって音の違いのわかる条件とそうでない条件があることも明らかとなった。 次に実験2では、次数の高い部分音の有無は影響を与えているのかについて調べるための実験を行った。その結果、次数の高い部分音の有無は影響を与えないことが明らかとなった。

さらに実験3では、実験1よりずれの割合が小さいA4音を用いて、部分音の非調和性は影響を与えているのかについて調べるための実験を行った。その結果、部分音の非調和性が大きくなるにつれて、A4音の基本周波数が録音されたピアノ音の基本周波数より高い方にずれている時がオクターブ音として合っていると判断したことが明らかとなった。また、実験経験が多くなるにつれて、A4音の割合が小さい時でも判断できるようになった。