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西村 明 ゼミ 平成15年度卒業論文
マルチチャンネルにおける収音方式による空間再現性への影響
堀口 卓志

現在、マルチチャンネルに使用される収音方式は、収音に用いる各マイクの間隔が狭いものがよく使用されている。しかし、実際に各マイクの間隔が狭い収音方式と各マイクの間隔が広い収音方式のどちらが、より空間再現性を実現する事が出来るか比較されていない。今回の実験では、各マイクの間隔が狭い収音方式と各マイクの間隔が広い収音方式のどちらが、より空間再現性を実現できるか、比較することを目的とした。

今回の実験では、マルチチャンネルの中で、4チャンネルでの収音方式に焦点をあてた。各マイクの間隔が狭い収音方式には、IRTクロスという各マイク間隔が25cmの収音方式を使用し、各マイクの間隔が広い収音方式には、IRTクロスの各マイク間隔を2mに変更した収音方式(以下IRT2m)を使用した。

この二つの収音方式を比較するには、同じ実験条件で収音した音データを実験に使用しなければならない。よって、同じ条件を作るため、まず再現可能な再生環境を作り、そこから音を再生し、再生された音を再現可能な録音環境で再生した音を収音した。以上の過程で収音した音データを、実験に使用した。

今回の実験の環境は、まず、2m間隔でスピーカーを設置し、各スピーカーと等距離にある中央の位置と、この中央の位置を左右にずらした2点、合計3点を聴取位置とした。よって、実権条件は、収音方式2種類・聴取位置3種類の合計6種類となった。

実験手順としては、まずアンケートを事前に作成し、その作成したアンケートの項目について、実験前に被験者に説明をする。その後、6種類の実験条件ごとにランダムで聴取をしてもらいながら、アンケートに答えてもらい、アンケート結果から考察を進めた。

実験結果は、聴取位置別にみると、IRTクロス・IRT2m共に、聴取位置を左右にずらすと聴取位置が中央の時と比べ、空間再現性が低くなる。収音方式別に見ると、実際の楽器の配置と被験者が知覚した配置のずれの差が、IRTクロスよりIRT2mの方が全体的に小さかった。また、臨場感・奥行き感・分離度・主観的な好感度等の評価が、IRTクロスよりIRT2mの方が全体的に高かった。以上の事から、マルチチャンネルにおける収音方式では、各マイクの間隔が狭い収音方式よりも、各マイクの間隔が広い収音方式の方が、空間再現性を得られる傾向にある事が判った。

また、その他にも一部の楽器音の特性が原因で、実際の楽器の配置と被験者が知覚した楽器の音像にずれが出た可能性がある事が判った。しかし、各楽器については、実際の楽器の配置と被験者が知覚した音像のずれ度合いについてしか実験を行っておらず、原因を解明するには至らなかった。