本論は、左右耳の聴力と音の大きさ知覚の関係についての研究をまとめたものである。左右耳の大きさの知覚差と左右耳の聴力差の違いを調べることによって、左右耳の音の大きさ知覚差があれば聴覚の異常を見つけることができる。また、左右耳の音の大きさ知覚差を調べるための実験プログラムを作成した。このプログラムは、右チャンネルの音圧を固定して左チャンネルからランダムで+10dB〜-10dBの範囲で右チャンネルより大きな音が出るようになっており、左チャンネルの音を右チャンネルと同じ大きさに知覚できるように調節するというプログラムである。このプログラムを使うことによって、左右耳が同じ大きさに知覚される時の左右の音圧レベル差が調べられるのである。
実験は無響室にて行い、聴覚検査と左右耳が同じ大きさに知覚される時の左右の音圧レベル差を調べる実験を5人の学生被験者に対して実施した。計測した結果から左右耳の聴力差と左右耳が同じ大きさに知覚される時の左右の音圧レベル差の相関を分析すると、相関係数0.6357と結果がでた。これは聴覚検査の最小可聴値の差と左右耳の音の大きさ知覚差に相関関係があることがわかった。また、相関係数が誤っているかどうかを判断する危険度も0.001だったので、2つのデータには有意な正の相関があることが分かった。この事から、聴覚検査で片側より良く聞こえる耳に於いて、左右で同じ音圧レベルの音をあたえると、良いほうの耳はより大きく感じ取れることが予測される。
さらにこの研究で使ったプログラムを応用することによって、難聴者における左右耳の音の大きさ知覚差も調べることができ、難聴者の補聴に関する研究にも役立てることができる。