日米の大学教育を比較すると、日本では18歳で入学する学生が非常に多いこと、IT環境があまり整っていないこと、集合教育の場が容易に実現する環境が整備されており、e-learningが必要とされる場面が少ない、といった特徴があげられる。しかしながら現在、就業しながら大学、もしくは大学院で教育を受ける社会人が増加していることや、理系のスペシャリスト化に伴う論文博士の一般化、さらに、生涯学習の社会的ニーズの高まりに対応するために、e-learningが有効であることもまた事実である。したがって生徒、講師、双方の負担を低減するために、e-learningに向けた最適な組織体制を構築することが必要である。生徒側の負担については、昨今のブロードバンド・ブームや各家庭のIT設備の普及に伴い、ある程度まで低減できることが予想される一方、講師側は佐賀大学の例をみてわかるように、新しく始まったe-leraningコンテンツ作りに忙殺され、本業に集中できないという本末転倒な状態になっていることが多い。従ってe-learning専門スタッフ、もしくは外部委託業者を有効に活用すること、また、e-learningを使用することを前提とした組織改変が必要になるとともに、生徒にとって従来の講義形式の集合教育よりも魅力的なコンテンツが作成できるよう講師の努力が求められる。無論、容易な作業ではない。しかしながら、今までの一回限りの講義と違い、e-learningの講義は年々アーカイブされていく。そしてその結果はその学校だけでなく教育という分野全体において財産となっていく。我々はその貴重な財産の構築を一刻も早く実現すべく努力していく必要がある。