ネットワーク社会の拡大により、インターネットや携帯電話など通信網に関連するトラブルや犯罪は後を絶たない。ネットワークを利用したマルチ商法や詐欺、携帯電話を使った「ワン切り」等も形を変えながらいまだに存在し、個人情報や企業情報に関する被害は深刻な社会問題になってきている。自己の情報の防衛や安全な通信環境の大切さは、自分が被害に会うまでなかなか気付くものではないが、いざ自分が被害にあってしまってからの対応では、事前の防衛策に比べ膨大な時間と労力を要する。
本研究では、以前からその存在が取りざたされ、「不可能だ」「いや、可能だ」と論議を呼んでいた「クローン携帯」を取り上げた。1999年頃に雑誌などで話題になった「クローン携帯」とは、ユーザーが使用している携帯電話番号と同じ電話番号の携帯電話のことを指す。悪意のある者が作った「クローン携帯」からかけられた通話の料金はすべて本当の契約者に請求され、結果として正規の契約者が高い通信料金を支払わなければならないことになってしまう。ことさらネットワーク社会の危険を煽るつもりはないが、ほんの少しの注意をすることにより個人の情報は守られ、安心できる通信環境を得ることができることを、被害の例、国会での議論、各携帯キャリアからの開示情報などに基づいてまとめた。