高速回線・常時接続の環境が一般的なものとなるなかで、P2P技術が従来のサーバ・クライアント型のネットワークシステムに替わるものとして注目されている。P2Pはハイブリッド型とピュア型に大別されるが、とくに後者は高速ネットワークを前提とし、これから本格的に普及する可能性を秘めたものである。
ところで、自由なファイル交換、必要とする情報資源へのアクセスの容易さが見込まれるP2P型ネットワークであるが、反面、セキュリティ面での懸念や、P2Pの名を世界に知らしめた「ナップスター」のように著作権の問題を新たに惹き起こす可能性が指摘される。本論文では、P2Pの社会的な側面として、「ナップスター」の裁判記録をつぶさに検討することを通じて、今後、P2P型ネットワークが社会的にどのように存在しうるか、あるいはどのような権利関係の変化が生じうるかについて考察した。