ビデオドラマ『さよならサクラFM』を製作し、その過程において多くの映画表現のあり方について学んだ。本論では、このドラマの企画・脚本段階から、プロダクション、ポストプロダクションまでをふりかえり、ドラマ制作を支えるソフト・ハード面において必要となる諸要素とその統合の過程を明らかにする。本作の構想に先立ち、上級生がのこしたプロットを下敷きとして、ゼミ生による脚本検討会議を通じてストーリーが形づくられていった経緯をはじめとする制作準備段階、キャスティング、セットや大小道具の制作、そして絵コンテや演出プランの策定、撮影中の演出のポイント、機器操作技術の内容、さらに撮影後の編集・音楽・特殊効果・整音・DVD化などのことについて、記録にもとづき詳細に報告する。これらの過程で生じたさまざまな困難やその克服の過程、そして成果、観客からの評価などについてもまとめる。また、表現技術上の問題として、特に編集における映像と音声の編集ポイントの違いによる印象の変化について、このビデオドラマの素材を用いた実験映像を制作し、精密な検討を加える。このようなまとめを通じて、本作が学生自主映画として制作されたことの成果や教育的意義について論考する。