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伊藤 敏朗 ゼミ 平成15年度卒業論文
カメラユビキティの概念把握とそのための教材開発
間瀬 夢子

カメラユビキティ(Camera ubiquity)とは「カメラの遍在性」のことである。「遍在性」とは、遍く存在するという意味で、映画におけるカメラユビキティとは、映画が提示しようとする場面において、カメラはどこにでも存在でき、どこからどのようなアングルを撮ることも了解されているという意味である。これは映画言語におけるきわめて重要で、かつ無意識的な原理であり黙契であるが、あまりひろく理解されているとは思われない。そこで本研究では、この概念を的確に把握し、理解を促すための教材開発をおこなった。また、カメラユビキティの概念を拡大していくことで、映像表現の物語性について考えることができることを明らかにする。本研究により、カメラユビキティには、つぎのような原理があることがあきらかになった。原理1:カメラはどこにでも存在でき、かつ、どこにも存在しない。原理2:カメラの存在は、物理的な制約を受けない。原理3:カメラは出演者にとって無きものである。原理4:カメラの視点は観客の意識の視点、すなわち物語の視点に一致する。このような概念把握のために13分の教材ビデオ番組を制作し、DVDにまとめた。複数の学生の被験者に試写したところ、カメラユビキティという言葉の意味や概念が、正確に理解できたとの感想が得られた。以上のような研究成果から、「カメラユビキティ」の概念をわかりやすく敷衍していくことにより、映像製作教育に有効に用いたり、映像コミュニケーションの本質的理解を深めることができるものと考えられる。