本論は、映像作品において「音楽」がどのように使われ、どのような効果をはたしているかについて研究したものである。歴史的にみると、最初期のサイレント映画でも、音楽の伴奏をともなって上映されることが多く行われ、トーキーに進化してからは数多くのミュージカル映画が製作されて大衆に歓迎された。また音楽が物語の起伏にあわせて使われ、作品としての情感をたかめる効果をはたし、映像と音楽とが一体となった表現形式として完成されていった。優れたミュージカルの舞台が映画化され、あるいは映画からヒット曲が生まれるなど、両者は商業的な意味でも相乗効果を生むようになり、近年では音楽のセールスプロモーションのために映像が製作されるということが常態化している。このような表現上の効果や、商業的な目的、さらにメディア機器の発達などの技術面との関係などについて、それぞれの時代を代表する作品をとりあげながら論考する。また、音楽が映像の印象に及ぼす影響と、映像が音楽に及ぼす影響などを、具体的な実験例とともにとりあげ、映像と音楽が組み合わされたときに生じる様々な現象-マルチモーダル効果についても述べる。