近年、少年による犯罪事件が多発している。少年たちはどのような環境にあり、なぜそのような罪を犯してしまったのか、原因は何にあるのか、われわれは当然それを疑問に思い、知りたいと思う。われわれには憲法21条によって保障された知る権利があり、それを報道するマス・メディアにも、憲法によって保障された報道の自由・表現の自由がある。このような表現の自由は、国民の知る権利に仕えるものである。しかし、いっぽうで罪を犯した少年は、少年法などで保護されており、新聞などのマス・メディアによる容疑者の少年の氏名や写真など、少年を特定しうる全ての情報の公開が禁止されている。このため、少年法と表現の自由との間には、しばしば軋轢が生じる。1997年に起こった神戸の児童連続殺害事件をめぐって、「フォーカス」などの顔写真掲載や「文藝春秋」の検事調書の掲載などが大きな社会問題となり、少年法などで保護されている少年の人権の観点から、そうした報道の妥当性が問われた。諸外国でもこのような例が発生しており、もはや世界各国で問題となっている。本論はこれらの矛盾とも言うべき不明確な現状に疑問を抱き、これらに関する法律や憲法、現在の少年犯罪事件に関する報道の状況、諸外国の少年法と少年事件報道の事例、少年法改正による変化、そしてこれからの少年犯罪事件の報道についてのあるべきすがたを研究したものである。