本研究は、実打が素振りと同様に振れているのかということを明らかにするために、両スイング動作の差について研究を行なったものである。
被験者はゴルフ未経験者5名、ゴルフ経験者1名の男子学生計6名を対象とした。実験は、素振りと実打のスイングを連続的に行って1セットとし、被験者にアプローチウェッジ(AW)を用いて5セット行わせた。被験者に自分が良いと感じた実打を選ばせ、そのときの1セットを分析対象の試行とした。分析対象局面はアドレス、トップ、インパクト、フィニッシュとした。分析項目は、1)クラブヘッドの軌跡、2)重心位置の変化、3)膝角度の変化、4)左手首角度の変化とした。
クラブヘッドの軌跡は、被験者の上方から見た軌跡、左側方からみた軌跡、正面からみた軌跡の3方向から比較を行った。被験者の上方からと左側方から見た軌跡では、素振りより実打の方が後方に大きく回しているという差があるが、正面から見た軌跡では、大きな差は見られなかった。重心位置の変化では、アドレスで最大2cm、トップで最大3cm、インパクトで最大6cm、フィニッシュでは最大7cmの差がみられた。位置変化は被験者の上方から見た重心の変化を比較した。未経験者ではトップからフィニッシュにかけて重心位置に大きな差が見られ、経験者では終始大きな差が見られなかった。膝角度の変化は、左膝、右膝に分けて比較をした。左膝角度の変化は、アドレス、トップ、インパクト、フィニッシュの順で、経験者では10度、2度、10度、4度の差があり、未経験者では平均して約8度、10度、10度、13度の差があった。右膝角度の変化も左膝と同様に、経験者で8度、3度、6度、12度の差で、未経験者で平均して約7度、3度、19度、16度の差であった。左手首角度の変化は、膝角度変化と同様に、経験者では1度、8度、3度、9度の差で、未経験者は平均して約6度、3度、7度、16度の差があった。
素振りと実打の差に、未経験者、経験者ともに似た違いは見られたが、その差は未経験者では大きく、経験者では小さかった。これはスイングの熟練度によるものと思われる。よって、スイングの熟練度が高いほど、素振りと実打の差は小さくなると思われる。