横澤 美紀 ゼミ 平成14年度卒業論文
視覚知覚の成長過程の検討 -画像処理によるシミュレーション-
上野 泰弘

本論は、人間が普段当たり前のように行う『物を見る』という行程について、視覚の成長過程とその特徴を考察し、『Visual Basic』を用いて作製した画像処理プログラムを応用する形で、生まれてからの視覚の成長をコンピュータ上で再現する事を目標としたものである。加えて、コンピュータ上での視覚を如何に人間に近づける事が出来るかを検証する。人間は何かを見た時、瞬間的にそれを理解することができる。

視覚におけるメカニズムをコンピュータ処理で実現するのは、一般にはコンピュータからすれば0と1の羅列でしかない情報の計算処理の場合と違い、見たものを瞬時に理解しようとする人間の脳の『先天的』『潜在的』なアルゴリズム(処理手順)がわかっていないという点で解明が大変難しい。コンピュータ上での視覚は、現実物体の形状・色・材質・位置・速度などを計測し、そこから「意味」の理解を得る。

ここでいう「意味」とは、例えば、『目の前に置かれた物体はどんな形をしているのか?』『その物体はどちらを向いていて、どこにあるのか?』『その物体を別の場所に移動するにはどのようにつかみ、どのような経路で持っていけばいいのか?』という事。人間が普段当たり前にできる事だが、これらをコンピュータが模倣する事は非常に難しいのである。このようなコンピュータビジョンの研究を調べていくと、人間の脳の複雑さが実感できる。故に、人間の奥底に潜む精神・心理を解き明かし、人間の視覚を模倣する事もまた、非常に大きな課題となる。

しかし、それだけにこのような行程をコンピュータ上での完全な処理が可能となれば、実に様々な分野での技術の飛躍的な進歩を図ることができる要となる。