アントワーヌ・ドゥ・サン=テグジュペリが絵本『星の王子様』を執筆してから60年、今なお数千万部の売上を誇り、生誕百周年を過ぎて現在この本が再認識されているのは何故だろうか。彼はこの本の著者として有名なだけでなく、60年前に現在の地球文明の矛盾を指摘していた20世紀における最も深遠な思想家の一人として再び研究されはじめているからである。子供のころ、普通の絵本として読んだ少々難解なこの本のなかに登場する王子様をはじめとする多くの人々、動植物、それらの言葉や行動が何を意味し、何に警鐘を鳴らしているのか、改めて精読し考えてみたいと思った。
本論文では、プロローグ(1章)とエピローグ(6章)の間で、著者が自ら描いた沢山の象徴的な絵の謎、六つの星を巡りながら出逢ういろいろな欲をもった人間像の意味、七番目の星「地球」で出逢ったキツネや1週間過ごした「ぼく」との会話の真意や、「愛」と「責任」を振り返って最後に自分の星へ帰る王子様と心の旅を共にしながら、現代に生きる自分のあり方を考え、自分の考えで整理した。
政治、経済問題、戦争、自然環境問題など現代がかかえるあらゆる矛盾や課題を含んだ深遠な絵本であり、現代にもあてはまることが多い。今後もさらに読み深めていきたいと思っている。