笹間 宏 ゼミ 平成14年度卒業論文
文字の感情表現 -形-
仁科 朋子

これはフォントの違いによる感情表現について研究したものである。それはつまり、人間の多種多様な感情をフォントを変えることによって表現し、受信者に送信者の感情を正確に伝えるにはどうしたらいいのかを調べる研究である。

和文書体は明治に始まる。印刷に用いるためだ。初めは明朝体が主だって作られたが、続いて広告用にゴシック体が開発され、これに、教科書体、楷書体、ナール体を含めた五つの書体が現在使われている主な書体となっている。 そして今では、文字はデータ化されて、昔よりもフォントは作りやすくなり、より多くの書体が開発されている。

送信者側として、漫画や本などを対象に、現状での書体の使われ方を調べる。特に漫画は、基本となる書体の使い分け以外にも、多種多様なフォントの使い方で感情や場面を表している。場面では、回想シーン、機械が使われる場面、手紙、昔の話(歴史的な話)、重要な場面で異なった書体が使われていた。感情では、怒り、恐怖、不安、楽しい、やる気があるといった感情のセリフに異なった書体が使われている。これら以外にも、登場人物によって変えられていたりもしている。

その他の本では少なくなってしまうが、童話に多く見られた。その中でも、『ハリーポッター』に使われるフォントは今までになく、凝っている。大きく分けて、「音」と「書かれている文字」の2つに書体の変化が見られる。音では、セリフの感情の起伏による声の多きさの違いを、フォントの大きさで表していたり、恐怖を伝えるセリフ、そして、歌声、呪文の言葉、物音などに使われてる。書かれている文字では、手紙、看板、掲示板、本の題名(書名)、横断幕、新聞などに使われている。漫画は、セリフを言う人物の感情を表しているのに対し、童話は、セリフを聞く人物の感情の受け方を表しているという感覚を受ける。

これらを素材に、受信者の感情の受け取り方を、アンケートを使って書体の使い分けに対する効果の調査をした。結果は、大抵は送信者が伝えたい通りに伝わっていると思われる。したがって、書体を使い分けることによって、内容がよりわかりやすくなっているといえる。しかし、やり過ぎは良くないと言う意見も見られた。読みにくくなるからだ。書体を使い分けるときには、ルールを決め、変え過ぎない事に気をつけなければならない。

最終的には、漫画に用いられたものを基盤にして、その他の本やアンケート結果を元に、感情や場面にあったフォントを提案している。