大泉 敬子 ゼミ 平成14年度卒業論文
韓・日食文化比較論
鄭 宰旭

「食」の世界。そこから国の文化や社会について様々なことが見えてくる。この食の世界を対象としてそれを文化としてとらえようとする日本において韓国料理がそして韓国において日本料理が外食産業としてどのように受容され、変容していったかと言う面に注目してそれぞれの国の文化と社会について見て行きたいと思う。その展開過程を明らかにし、そこから日本と韓国の国の文化と社会について見て行くことにする。

韓国と日本の伝統宮廷料理について調べて日本の食肉文化の歴史的な背景と社会的状況について見る。日本の食文化は江戸時代の町人の世界で発達した料理が現代までつながっているが韓国料理は宮廷において洗練されそれが両班階級との交流を通じながら普及してきたのである。韓国と日本でそれぞれの国の料理がどのように受容されどのように変容したのか変容過程と韓国と日本の社会における展開過程を文化的に解釈して見た。変容の展開過程について焼肉に代表される日本の韓国料理は、はじめ在日韓国・朝鮮人によって「ホルモン焼き」として出発し、外食産業の中では「無煙ロースター」の開発、家庭料理としては「焼肉のタレ」の開発によって、「日本化」ともいうべき展開をとってきた。一方、刺身に代表される韓国の日本料理にしても、はじめは植民地時代に日本人客を対象としていたのだろうが、戦後は韓国人のための日本料理、すなわち「韓国式日本料理」として始まり、時代の流れの中でだんだんと、むしろ「日本の韓国料理」とでもいうべき料理に変わっていった。韓国の日本料理の展開過程を見ても、「委食」から「日式」へという呼び名の変化や、現在の外食産業の「日本化」といった現象を通して、韓国社会における日本文化の位置づけについて考察する手がかりがあった。

韓国食文化と日本食文化の特徴、食事様式、味覚、その他様々な食文化を比較して見る。大方の日本人は韓国料理といえば、焼肉とキムチしか思い浮かばない、一方韓国人にも刺身を中心とした一部の料理だけが日本料理と思われている。

韓国社会の産業化あるいは都市化といった近代化の歩みは、日本の社会が歩んで来た道ときわめて似ており、日本の社会が歩んだ高度経済成長の道を、そのスピードははるかに速いが、韓国社会もたどってきたのである。「倭色文化」といわないとしても、日本と共通する方向への道を進んでいる。韓国と日本とが共通の文化をもつわけではない。むしろ同じような道を歩んでいるのに、なぜにこんなにも違うのだろうかと思うほどである。それぞれの国において、それぞれの国の伝統に根ざした文化が生きているのである。