コンパクトディスク(CD)に代表されるように、アナログ情報のディジタル化が進んでいる。ディジタル化には多くのメリットがあるが、デメリットもある。その1つが音質の劣化である。音質劣化の要因には様々なものがあるといわれているが、今回はその中のJitterについての実験を行った。Jitterとは、アナログ情報をディジタルに直す時、その情報を等間隔に刻んでいくわけだが、この間隔が等間隔にならず差が生まれてしまう。この差をJitterという。このJitterはディジタル化に際して、必ず発生するディジタル特有の問題であり、これをまったく無くすことは非常に難しいことであるが、Jitter量を抑え、音質劣化を少なくすることは可能である。
そのためには、まずディジタル化された音楽を聴く人間の、Jitterを感じ取れる値(以下、検知限)を把握しておかなければならない。これまでJitterが音質に劣化を及ぼすことは分かってきているが、その検知限を知るための実験は少なく、はっきりとしたことは分かっていない。そこで、この研究では、どれくらいのJitter量を聴き分け、音質劣化を感じ取ることが出来るかについて、ホワイトノイズJitterと500Hz純音Jitterの2つを付加して実験を行った。
この実験では判断基準であるCDの音源を用意し、それに対して、CD音源のディジタル信号上に人工的なJitterを付加したものと、基準と同じCD音源そのままのものを準備する。そして、この3つを自由に切り替えながら、どちらがCDの音源と同じであったかを判断してもらい検知限を調べた。その結果、今回の実験ではホワイトノイズJitter及び500Hz純音Jitterを付加したとき、人が音質の劣化を感じ取ることができる検知限はどちらも3.14μsという結果が出た。また、検知が出来ていないと思われる値も314nsであり、どちらも同じ検知限であった。