この小説に出てくる中国の三国時代とは、西暦220年〜280年に至る魏、呉、蜀の三国が鼎立した時代のことである。正史としては晋の陳寿が書いた『三国志』があるが、それらの資料をもとに1300年代末の明の時代に羅貫中が書いた小説が『三国志演義』である。主人公は蜀の劉備玄徳とその智将・諸葛亮孔明だが、なんといっても人気の的は諸葛亮孔明である。なぜが。その秘密を探るために小説の筋を追いながら、戦乱の時代を軍師として生きた彼の人生を追ってみた。幾つかの危機的局面で見せた「人間への洞察力」「現状把握」「臨機応変の発想力」「信賞必罰の道徳」といった彼の知恵は、今日でも十分教訓となる知恵といえよう。