いま、世界ではさまざまな映画祭が催されている。本論は、それらの映画祭がどのように社会的意義をもち、映画文化の発展に寄与し、観衆の関心にどのような影響を及ぼしてきたかを研究したものである。まず、アカデミー賞、カンヌ・ベネチア・ベルリン・モスクワなどの主要映画祭の発祥の起源や、これまでの運営方法についての概要(審査員や審査基準など)、社会事象と映画祭の歴史とのかかわり、映像技術の進歩と受賞作品への反映、受賞作品の経済効果(受賞作品の社会的認知の程度と、興行成績の関係性)などについて調査した。つぎに、各年代ごとに受賞作品を比較検討し、撮影技術だけでなく、各時代の文化や風俗、歴史的事件などを反映した傾向について考察し、それぞれの映画祭ごとの特有の傾向や特徴をあきらかにした。さらに、各映画祭のあり方にたいしての批評についても分析した。現在は、映画関係者やマスコミだけでなく、多くの観客が、映画祭の意義や課題に対しての多様な意見をもつ時代である。このような分析から、国際映画祭の意義と今後の課題について論考し、その望ましいあり方を提議する。