本論は、現代のテレビドラマ界を代表する脚本家・野島伸司の作品の特色や魅力、その時代性・社会性などについて研究・分析したものである。野島のドラマは、近年の一般的なトレンディドラマの楽しく美しい傾向とは様相を異にする。そのストーリーは暗く、登場人物は極限状態に追い込まれている。視聴者はそこから人間の本質を見つめる思いにとらわれるのである。野島の作品は、それへの批判も含め、おおきな社会的反響を巻き起こしてきた。本研究では、まず、野島の脚本・企画・原案によるテレビドラマや映画を分析し、そのストーリーテリングの特徴などについて明らかにした。また、野島に関する雑誌記事等における特集やインタビュー、ファンサイトにみられる詳細情報などを調査した。さらに彼の書いた詩集を分析するなどして、その作品世界の内面分析を試みた。このような研究を通じて、昨今のトレンディドラマとは一線を画す社会派・シリアス路線をとる脚本家・野島の独特な地位と、その作品の特徴・魅力を明らかにすることができた。