本論は、日本映画をひとつの文化産業体としてとらえ、その歴史と現状、そしてこれからの発展のための課題について研究したものである。わが国の映画鑑賞人口は1959年以降、テレビの普及やレジャー産業の拡大によって減少し、映画は産業として斜陽化した。その後、大手映画会社の業態は、製作業務から配給業務へと縮小、撮影所システムは崩壊して新人養成機能は喪われた。しかし映画を志す若者たちは、8ミリカメラなどで独自に映画を撮り、そこから時代を担う監督群が誕生するなど、独立系映画の伸長と質的向上が図られる一方、興行形態としてはシネマコンプレックス(複合映画館)が急速に全国に展開して市場競争が起きたことなどによって、近年の日本映画は全体としての下落傾向から上昇傾向に転じるうごきが見られる。ここでアメリカ映画産業に目をうつしてみると、ハリウッド・システム(製作の過程を細かく分業して娯楽的映画を量産するシステム)によって築かれた黄金時代から、その後の浮沈を経て、現在では世界一の産業規模に発展している。本研究によれば、アメリカではプロデューサーが監督以上に権限を持ち、トータルに作品の製作を管理していることがわかり、日本でもプロデューサーの育成が求められるところである。ここ数年、国際映画祭等で日本映画が注目を集めるようになり、アニメーションか実写かを問わず、海外に受け入れられるようになってきた。2002年11月、文化庁は若手新人監督やシナリオ作家を支援していく構想を発表した。支援内容が限定的であるなどの難点は残るが、映画文化の育成に国が具体的に乗り出した意義は大きい。本稿は、これらの調査・研究にもとづいて、日本映画産業を復興させるための課題を整理し、その解決策を提議する。日本映画産業の復興は、すぐそこまで来ている。