石塚 省二 ゼミ 平成14年度卒業論文
『陰陽師』 〜平安に生きた稀代の陰陽師・安倍晴明〜
片田 理恵

まだ闇が闇として残っていた平安の時代に活躍した陰陽師。中でも多くの逸話を残し、稀代の陰陽師と言われた安倍晴明について中心に調べた。数々のメディアで取り上げられ、ブームとも言うべき現象の起きた陰陽師だが、平安という現代とは全く無縁の時代の彼らがなぜこんなにも人々の注目をあびることになったのか、ということに興味を持ち、安倍晴明から果ては陰陽道に至るまで調べていくうちに、ひょっとしたら一見無縁に思える平安と現代は似ているのかもしれない、と思った。世界情勢の変化と共に、我が国が病みきっていることにやっと気付き始めた、というのが今の日本ではないだろうか。そして、時代の流れの中で、病んだ世の中に必ず現れてきた"英雄"の存在を求めているような気がする。安倍晴明という人。歴史の表舞台で大々的に活躍した人ではないが、闇が広がる平安という時代を飄々と生き、数々の事件を解決した。見方を変えれば、平安時代を舞台にしたヒーローなのだ。日本を強く感じさせる内容。平安の闇の世は、現代の日本にも当てはめられる。つまり、「現代にこんな人がいたら」的な人気もあるのではないかと思うのだ。病んで英雄を求め始めた現代に、安倍晴明という陰陽師が颯爽と現れたわけだ。ひとたび呪をかけて、現代の"闇"を取り除いてくれるかもしれない。陰陽師が注目された理由のひとつには、そんな期待も込められていたような気がする。