石井 政弘 ゼミ 平成14年度卒業論文
少年野球における遠投とピッチングのフォームの違い
小川 知之

本研究では、小学生高学年5名の遠投時とピッチング時のフォームの違いについて比較を行った。セットポジションから遠投とピッチングを1球ずつ投げるように指示し、それぞれのフォームをDLT法を用いて分析した。フォームを比較するために、(1)利き腕側の指先の速度、(2)肘関節の角度変化、(3)重心の高さ変化、(4)リリースの高さ、(5)両肩と肘がなす角度、に着目した。

指先の速度は、遠投、ピッチングとも最高速度に大きな違いはなかったが、最高速度時にリリースする、最高速度になる前にリリースするという2つのタイプのグループが確認できた。これは、遠投時に最高速度でリリースしているのは、ピッチングと遠投を同じフォームで投げているからだと思われる。肘関節の角度は顕著に差が確認できた。ピッチング時のテイクバックの角度とリリースポイントの角度の差が平均で約40度に対し、遠投時には平均で約80度となった。これは遠投時の方が肘関節の「伸展-屈曲-伸展」という「むち動作」を使って投げているといえる。重心の高さ変化は、遠投時には伸び上がりながら投げることが確認できたが大きな差はなかった。リリースの高さは、遠投時がピッチング時に比べ平均で約10cm高い位置でリリースしている。伸び上がりながらリリースしているのと、投射方向が上方向に変わるためだと推測できる。両肩と肘がなす角度では、2つの傾向が確認できた。遠投時の方がより一直線に近いという傾向と、ピッチング時の方がより一直線に近いという傾向である。これは被験者が技術的にまだ未熟であるためにおこったものだと考えられる。遠投時とピッチング時のフォームに大きな違いは認められなかったが、遠投時はピッチング時より身体を大きく使って投げている傾向がうかがわれた。