卒業研究論文概要集に寄せて

今年から優れた卒業研究に対して、学長賞と小田賞が与えられることになりま した。これは、卒業研究が大学生活4 年間の集大成の成果であるとともに、こ れから社会人として活躍していく皆さんにとって重要な意味を持っているから です。卒業研究では、これまでの受身の授業や演習とは異なって、学生一人一 人が主人公となり、テーマの選定から、研究のスケジュール、資料の収集、さ らに必要に応じて実験やアンケート調査などを全て自分で完遂しなければなり ません。それらの結果を他の人々に理解出来る形にまとめて報告したものが卒 業論文です。すなわち皆さんは一つの研究プロジェクトのマネージメント体験 をしたことになります。

多分この初めてのプロジェクトはいろいろの困難に出会ったことでしょう。ど うしても必要な資料が見つからないとか、設備が貧弱なため充分な実験が出来 ないなどの経験をしたことと思います。多分皆さんは、12 月10 日の締め切り に追われたことでしょう。時間があったならもっと良い論文が書けたのにと残 念がっている人も多いことと思います。皆さんはこれから社会に出て、それぞ れの分野で、このようなプロジェクトを自ら提案し実行していくことが求めら れます。実際のプロジェクトは必ず経済的な制約や、厳しい時間的制約の中で 実行しなければなりません。そのときに、この卒業研究の経験がきっと役立つ ことと思います。

皆さんの卒業研究の成果はささやかなものですが、このような成果を積み重ね た総体が社会共有の知恵となるのです。たぶん今年の卒論の成果を受けついで、 次年度以降の後輩が、皆さんのやり残した課題に取り組んでいくことになるで しょう。この卒業研究論文概要集がそのような継続と発展のために役立つこと を期待しています。

情報文化学科長 笹間 宏